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 おいもだより・せなかだより 11月      2013年11月8日(金) [おいものせなか通信]

  大事な間違い発見(>_<)。17日のエコブランチは11時でなく、10時からの予定です。
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 久々にせなかだよりを書けました!何号かなあと振り返ったら、なんと今年の1月以来でした(^_^;)。
 せなかだより ⑪                                    2013.11.8

               カフェ と 「クレマチスな日々」     
                   
 カフェをオープンして、一ヶ月半。1人でお店とのかけもちを心配して、とりあえず週末4日間だけの営業日にしたのですが、開けてみれば、今日も1人とか…(^_^;)。
 おいものせなかはクソまじめな能書きやコンセプトを前面に出しているので、20年やっていても、お客さんの数は決して多くなく、いつも苦戦で、カフェもそうかなと覚悟の上でした。それでも、あえてカフェをはじめたわけ。その一つに、2人の友人の存在があります。

 私が、20代半ばでOL生活をやめて途上国支援の活動に入った団体で、縁あって朝日新聞社の朝日ジャーナルの連載コラムを私が書くことになりました。海外の市民団体のユニークな活動を毎週紹介する小さなコラムで、当時筑紫哲也が編集長だったもののテレビ等で不在がちで、副編集長の平池さんが現場をとりまとめていました。初めて全国区の有名週刊誌に、それもたった600字で簡潔に伝えるという仕事を、1年間平池さんに鍛えられ、他の取材もやらせて頂き、東京でライターの道も開けそうな時に、結婚で岩手へ。

 平池さんはその後、朝日グラフの編集長になり、環境問題のムックを出版し、夢は田舎で自給自足の暮らしでした。しかし、ガンで51歳で他界されたのです。当時、私はリサイクルショップ開店1年目、3人目の1歳の赤ちゃんを抱えていて、お金もなく、告別式への上京も断念しました。しばらくして、奥様から段ボール箱が何箱も。「夫の本を図書館などに寄贈しましたが、残った本はそちらで活用して下さいね」と、平池さんの環境や医療関係の本が届きました。

 おいものせなかが中小流通出版の良書を扱うミニ書店として20年。在庫として残っているいい本たちと共に、平池さんの本も皆さんに読んでほしいという長年の想いが、ようやく、「小さなブック・カフェ」というかたちになりました。他にはない、自然、環境、食、人権などを考える本たちです。いくら世の中がデジタルになっても、本はやはりいいなと思います。どうぞ、長居してゆっくり読んでください。中には、古本価格で売れる本も多数あります。


 「クレマチスな日々」というタイトルのズシッと重い、シンプルで素敵な装丁の本が、昨冬届きました。著者は八重樫恵子さん。ご主人の八重樫さんは、おいものせなかが開店した20年前に新聞社の花巻支局長で、お世話になりました。その後、八重樫さんは盛岡に移られたのですが、6年前に友人を通して、恵子さんがガンを発病と知りました。何年もお会いしていなかったので、気にしつつも、友人から時々様子を聞いていました。

 そして昨年3月、ご夫妻でお店に見えられ、久々に会う恵子さんのつやつやと元気そうな姿と、前向きな闘病の様子に胸が詰まりました。急きょ、まだ肌寒い元倉庫の入り口のベンチが応接スペースに。フェアトレードのハイビスカスティーに蜂蜜を入れて出しました。恵子さん、一口飲んで、「おいしい…」と癒されたような表情に、私もうれしくて、色々と話しました。「大丈夫、頑張るからね!」と帰った恵子さんを励ましたいと、後日ハーブティーと蜂蜜と手紙を書いて送りました。

 7月になって、「あれから気に入って飲んでます」と、ハイビスカスティーを買いに、ご夫妻で元気に来店。そして、7月下旬。ふだん通りに生活していて、急に体調を崩し、急逝されたのです。突然のことで、ご家族はもちろん、誰もが信じられませんでした。本当に残念。悔しい。まだ43歳。とてもご家族に愛情深く、ご主人と中学生の娘さんと大学受験をひかえた息子さんを残して。

 「クレマチスな日々」は、恵子さんがブログを始めた2006年から、昨年亡くなられるまで、日常や家族のこと、ガンの闘病や治療のことなどを、あたたかく、やわらかい感性で書かれたブログを、恵子さん亡き後、ご主人が一冊の本にまとめられたものです。

 先月、盛岡での新田コージ展に、八重樫さんが見に来てくれました。絵の好きな恵子さんは生前、コージさんの絵を気に入ってくれていたのです。「どっちがいいかなあ」と娘さんと一緒に、恵子さんが好きそうな1点を選んで頂きました。

 八重樫さんは、時々おいものせなかに来てくれます。毎朝恵子さんに淹れてあげるハーブティーや、ガン患者会の皆さんへフェアトレードの紅茶をプレゼントにとお買物して頂き、以前から、「カフェがオープンしたら、必ず行きますね」と。ようやく、その日が来ました。11月4日のその日はコンサートイベントで、カフェは3時半から営業と知って、その時間に合わせて、中学生の娘さんと盛岡から来てくれました。

 「カフェは、いい雰囲気ですね」と、20年前のリサイクルショップの倉庫から知っている八重樫さん。焙煎し立て、挽きたてのフェアトレード・コーヒーを、「おいしい」と言ってくれました。この場に、恵子さんがいたら…。でも、私たちには、恵子さんが隣りで、「私は何にしようかなあ」と言って、ケーキなんかも頼んで、「おいしい…」と、うれしそうに飲んでいる姿が、本当に見えるようです。



 正直言って、まさか自分がカフェをやるとは夢にも思ってもいませんでした。どちらかというと、食と環境と途上国関係、国際問題で書くことを仕事にしていくのかなと想像していました。しかし、現実は思い通りにはいかず、飲食業素人の私なのに、色々な要因が重なって、はじめました。だから、自分ひとりでやっていけるとは思えなくて、皆さんが必要とし、活用してくれるコミュニティ・カフェに育てたいと思います。

 自分の想いだけの自己満足、趣味のカフェではありません。味、サービス、経営もちゃんとできるように努めていきます。みんなが来たくなるような、一杯の飲みものやスープで、恵子さんのようにホッと癒されるようなカフェを目指します。まだかけだしですが、今後もお店同様、応援して頂けたらうれしいです。 

                                                 (新田ぶん)