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 おいものせなかだより9,10月号   2021年9月11日(土) [おいものせなか通信]

 おいものせなかだよりができました!なんと、今回は久々に裏コラムがあります(*^^*)。

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 ウラコラム  

       女に生まれたというだけで
                           2021.9.11

 アフガニスタンが気になる。中村哲さんのぺシャワール会などの国際支援もあって、この20年間で生活も良くなってきたのに。もはや自由や民主主義どころか殺されるとおびえる人々の姿に苦しくなる。特に女性は教育や就労の禁止、外出もままならない。世界の人口の2割の国の飽食と環境破壊の陰で、戦争や紛争はなくならず、国を追われ難民が増えている現実が…切ない。


 10月11日は、「国際ガールズデー」。世界には厳しい環境に置かれている少女、女性たちがいる。児童労働、人身売買、児童婚、性暴力、性器切除、身内による殺人など。その多くは貧困が原因で、女に生まれたというだけで差別され、教育・就労の機会はおろか、自由や人権もない。「国際ガールズデー」とは、男女の不平等、女性に対する暴力の撤廃と女子教育の普及など、若い女性たちが直面している問題に取り組むことを訴えるために国連で定められた記念日で、毎年この日にイベントを行っている。


 その10月に、私は性暴力の問題を考える映画の上映会を行う。その映画は、「女を修理する男」。以前おいも通信やブログでも紹介した、アフリカのコンゴの性暴力の被害者を命がけで治療する婦人科医のデニ・ムクウェゲ医師のドキュメンタリー映画である。2020年1月の通信のウラコラム「利他と照一隅」で、中村哲さんの訃報と共に紹介した。


 コンゴで女性の大規模レイプは紛争の兵器と化し、赤ちゃんから80歳の女性まで、その残虐さは膣に爆薬など目を覆いたくなる酷さ。20年で10万人の女性被害者の治療にあたり、世界に真実を伝え、女性の人権尊重を訴えたことで命を狙われても、被害者の再起を応援し闘っている医師。コンゴの大規模性暴力の背景には、携帯電話やパソコンの材料になる鉱物資源があり、毎日使っている私たちとは決して無関係ではない。


 「世界の悲劇に背を向けるのは共犯です」「性暴力を続けさせているのは、社会の無関心とタブー視と沈黙。沈黙を破ることが性暴力に対する絶対的な武器になる」と、ムクウェゲ医師は2018年ノーベル平和賞受賞式のスピーチで力強く訴えた。


 映画邦題タイトルの「女を修理する男」に、まるでモノを修理するみたいと私ならずとも違和感を持つだろう。「コンゴの性暴力と紛争を考える会」の米川正子さんが邦題について説明している。

 「映画制作会社から意訳せずに直訳をという依頼で、原題は英訳"The man who mends women"です。なぜ「修理」なのかの理由は、一点目に、ムクウェゲ医師は女性の身体を当然モノ扱いしておりませんが、残念ながら世界の一部の男性は、女性の性を経済的・政治的な「道具」(つまり、敵の弱体化、人口減少や資源へのアクセスを目的とする)として認識しているのが現状です。だからこそ「性的テロリズム」のような行為がコンゴだけでなく、他国においても長年続いています。二点目は、もし「女を治療する男」というタイトルだと医療的な解決だけに限定してしまうのですが、ムクウェゲ医師はそれに加えて、ボロボロに壊れている国家の構造全体(行政、司法、ビジネス、女性蔑視なども含む)を修理する包括的な解決策を求めています。ムクウェゲ医師が世界各地でアドボカシー活動を続けているのもそのためです」(映画ホームページより)


 さて、9月12日まで「叫ぶ芸術~ポスターに見る世界の女たち」が、石鳥谷町図書館のギャラリーで展示されている。ℐ(あい)おんなの新聞で連載している、世界の女性政策を研究してきた三井マリ子さんが集めた女性の人権に関するポスター展だ。見逃した方に、ポスターとコラム60編をまとめた素晴らしいカタログをお勧めする。(税込800円) 

 ウイットの利いたタイトルと写真。「政治は男のものではない(フランス)」「リップスティックで男女平等(フィンランド)」「グローバル化より女の権利だ!(マレーシア)」「じゃあ、政治家の顔を女性に変えたら?(ベルギー)」。


 三井マリ子さんはかつて「ママは大臣 パパ育児」という本を、1994年にヨーロッパ10ヵ国を回って、男女平等実現への取り組みを取材して書いた。人口は男女比半々なのだから、政治も女性議員を40%以下にしないというノルウェー発祥のクォーター制(割り当て)は、今や多くの先進国が導入している。日本はといえば9.9%で世界166位。フィンランドやニュージーランドでは、30代の女性首相が誕生しているのに。日本はジェンダー指数が153か国中120位、先進国の中では最下位。


 政治家に誰がなっても変わらないと若者は無関心だが、国民の意識が国を変える。この秋は衆議院議員選挙。私たちの暮らしは政治と直結している。棄権せずに女性や障がい者など社会的弱者の立場に立って政策を行う女性や政党に投票しよう。


 途上国だけでなく、なくならない女性の抑圧に、私はここで締めくくる言葉が見つからず、デニ・ムクウェゲ医師の来日講演(2017)でのメッセージを再び紹介する。

 医師は好きな日本の言葉「利他」を掲げ、「人生で大切なのは、自分のことだけを考えないということ。他者の人生をより良くするために、他者の苦しみを和らげるために、自分には何ができるのだろうかと考えるということです。そうすると自分が損したように感じるかもしれませんが、何も失ってはいません。あなたはもう大きな恵みを受け取っているからです」 


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